今年もツバメが帰ってきましたが…

5月に入り福岡演習林の事務所の窓の外を見ると、一羽のツバメが留まっていました。
ベランダの棚の上に留まっています
人がそばにいても逃げません


外では他のツバメが飛び回り、事務所の壁には泥や藁などを敷き詰めた巣が作られていました。

「土食って虫食って渋ーい」(ききなし)

忙しく飛び回っています

ツバメは3月頃からフィリピン、台湾などから日本に渡来します。
夏の間日本各地で繁殖し、秋ごろに再び越冬地に渡ります。
 

カラスやヘビなどの天敵の少ない人家の軒先などに営巣するので、巣作りから子育てまで容易に観察できます。
また、人からは昔から田んぼの虫を食べてくれる"益鳥"として知られるなど縁起が良い鳥として大切にされてきたようです。



福岡演習林の事務所でも毎年同じ場所に営巣しています。
今年も5月頃から姿を見せ始め巣作りを始めていました。

そんな巣作りに奮闘するツバメですが、ある朝見ると巣が壊されていました。



巣が壊され…

残がいが落ちていました
何者の仕業か不明ですが、あえて人の近くに巣を作りながら事務所が休日で無人となった際に天敵に襲われたのでしょうか?
巣作りをしていた場所にも姿を見せなくなりました。

彼らがどうなったかわかりませんが、無事でいてほしく再びめげずに営巣に戻ってきてくれればと思います。

2018/05/30 to

施設見学会―その2


前回の更新からすっかり日があいてしまいました、、、。
月日の経つのは早いですね。

気を取り直して、施設見学のつづきをしたいと思います~。

4月から5月にかけて、新緑が綺麗ですね。
ここは、通称、宮演区です。
九大演習林は、ここ篠栗以外にも、宮崎の椎葉村、北海道の足寄町にもあります。
ここには、宮演で見られる樹種が植えられています。

新緑が美しく、幹が明るい黄土色の木は、ヒメシャラと言います。
夏になると、ツバキのような、美しい花を咲かせます。



お次は、この施設見学のクライマックス、埋没化石林です。



どうですか?

一見、石のように見えますが、実はこれ、珪化木と呼ばれるものです。

通常、樹木は死んだ後、分解されてなくなってしまうのですが、
土石流などで土の中に飲み込まれると、分解されることなく、化石化することがあります。その代表が石炭です。
まれに、地下水に含まれるケイ素が樹木の細胞の中に流れ込み、すっかり石化してしまうことがあります。

それが、この珪化木です。

石炭を採掘する人たちにはとても迷惑な存在で、“石炭のなりそこない”、なんて言われることもあるそうですが、
4000万年前の自然環境を示す大変価値のあるもので、福岡県指定の天然記念物に指定されています。

ここに実際に来てみて、太古の地球に思いを馳せてみませんか?

では次にまいります。




この広場のような場所は、貯木場です。
演習林で伐採した木を、ここにいったん集めます。
先月ここを歩いたときは、立派なヒノキが、山のように積んでありました。


ところで、この木、みたことありますか?




篠栗九大の森にも生えている、ラクウショウ、別名、ヌマスギです。
北米原産の樹木です。
篠栗九大の森では、池の中に生えている写真が有名ですが、このように水のないところでも、普通にはています。
なかなかカッコいい木ですね。


次に行きます。



草原に、何やら鉄の棒がたっていますね?
あそこでは、気象観測を行っています。
気温、湿度、雨、日射量、風速、風向などなど。
森林生態系の理解に欠かせない、基礎的な調査を行っています。





草原に、草ぼうぼうの箇所があります。
なんだと思いますか?

ここは、植生遷移モニタリング区、と呼ばれる、草地の遷移過程を調査するための場所です。

いったい、どれくらい、草刈りを停止していると思いますか?

5年だそうです。
ずいぶん長い間、草刈りをしていないようですね。
試験区の中には、外来種の草本が多く、最近、ようやく樹木(まだまだ小さいです)が見られるようになってきたそうです。

お次はここ、里山動態モニタリング区です。
フェンスの中の樹木を、一度、全て刈り払い、その後の遷移過程を調査しています。





それでは質問です。
ここは、伐採して丸坊主になってから、いったい何年たっていると思いますか?

正解は、約5年だそうです。
先ほどの、植生遷移モニタリング区とは違って、樹木がいっぱい入ってきていますね。
写真には映り込んでいませんが、すぐ後ろには、立派な森林が控えています。
植生遷移には、周りからの種の散布や、切り株からの萌芽が重要なのがよく分かります。
また、お隣から竹(マダケ)がどんどん侵入してきています。
最近、西日本を中心に、竹林が急速に拡大しています。
これを話し出すと長くなるので(笑)、また別の機会に~。


それでは、ここが最後の場所です。




どうですか? なかなか立派な森ですね。

里山という言葉を聞いたことはありますでしょうか?

雑木林などとも呼ばれますが、その昔、石油などの化石燃料が使用される前は、里山から取ってくる薪や木炭が貴重なエネルギー源でした。

そのため、里山では頻繁に樹木が伐採されていたため、一般に木は小さく、また、幹からの萌芽による更新がよく見られました。
落ち葉も肥料として利用され、里山は昔の人たちの生活に欠かせない、人と自然が密接につながっていた場所でした。

戦後、ライフスタイルは激変し、私たちの生活は、里山からすっかり切り離されました。
この雑木林も、放置されて60年くらいたっています。
60年も経つと、すっかり、手つかずの自然な森のようですが、
写真の木をよく見ると、幹がうじゃっと寄せ集まっている場所があるのが見えるでしょうか??

これらは樹木が切り倒されて、その切り株の萌芽から大きくなったものです。
これこそが、かつて里山(人の手が積極的に入ることで成立する生態系)だった動かぬ(?)証拠です。

この福岡演習林では、草地から森林まで、遷移のプロセスを、わずか徒歩数分の距離で観察できます。

植生の遷移にはとても長い年月がかかるので、このような小さい範囲に、様々な遷移の段階が見られるというのは、なかなかスゴイことなのではないかと思います。

いかがでしたでしょうか?

短い時間でしたが、施設見学はここまでです。
今日ご紹介したのは、福岡演習林のごくごく一部です。

機会がありましたら、施設見学に来ることができなかった学生さんも、ぜひ福岡演習林に遊びに来てみてください。

2018年5月29日 TK