土を留める



演習林の伐採跡地で発生した斜面の崩壊です。頻発する集中豪雨のせいか、こうした崩壊はしばしば起きます。
規模は小さいものの、この場所はすぐ下に林道があり、崩土で道が塞がることから、しっかりした手当が必要となっていました。



初夏に現地を測量し、土質を調べたところ、不安定な土はあらかた落ちていること、地下水も出ていないことが分かりました。
今後予想される崩土も少なさそうでしたので、丸太積みの土留め(どどめ)を設計して、組み上げることにしました。



丸太積みの工法は特別な資材や機械は必要なく、自然地形に対して柔軟に適応できます。
とはいえ、大量の丸太が必要です。ちょうど構内敷地に伐採予定の人工林があったので、ここから資材丸太を調達することにしました。
7~8月の真夏、炎天下での伐採。数日でしたが消耗の激しい作業でした。

台風シーズンも終わった11月、いよいよ丸太積みに着手です。しかし、施工予定地は道路から少し上にあります。
そこで、この場所に資材運搬用の取付道をつくることからスタートです。



地形の制約に加えて、途中、盛土の不足に四苦八苦しましたが、なんとか崩壊地までの道がつきました。




さて、道さえつけば勝利は約束されたようなものです。
杭丸太、基礎用の栗石等、資材をどんどんあげていきます。それと同時に、崩壊箇所の下の地山をバックホウで切取り、床均し、杭うちと基礎をつくります。



基礎に横木と控木の丸太を組み上げて、番線で締め、それを繰り返します。


これで躯体は完成、


              
最後は土砂をしっかり詰めて


完成!

この丸太積みで落ちてくる土の衝撃と勾配を緩和して、下側への崩土を防いでくれる、はずです。

11月の半ばから12月にかけては、この仕事に邁進していました。
体力の自信はすでになく、肩や腰もガタピシきてる状態なので、正直なところ途中から「誰か代われ!」と思わなくもありませんでしたが、言い出しっぺが投げ出しては格好悪いので何とか踏ん張りました。

しかし改めて見返すと、測量に始まり、設計・積算、材料調達(伐採)、施工まで。
よくやったなと思いますし、また演習林らしい仕事であったな、とも思います。ともあれ無事にいい仕事ができたことはささやかな喜びです。

さて、年が明ければ保育間伐、枯マツ伐倒駆除と今度は木こり用務が待っています。これまたタフな仕事になるのは目に見えています。
そこでロートルの私はスロットルを絞り、若手職員に大いに頑張ってもらうことにします。

                                 2021.12.27 D.O






 10月18日から20日の日程で九州大学農学部地球森林科学コースの「森林調査実習I」が実施されました。

-樹木学実習-

構内で23種の樹木を採取しました。

図鑑を使って樹木の特徴を勉強中。試験は20種出題され、16点以上で合格です。


 
 
-自然林・人工林調査-

自然林で毎木調査

ヒノキ人工林で毎木調査

学生の皆さん、3日間の実習お疲れ様でした!


2021/10/22 kaji



生物リストをリニューアル

  演習林では教育・研究・管理で山に入る機会の多い技術職員は,デジタルカメラを携帯し,風景や森林の様子,動植物などを記録写真として保存します。撮影した動植物は生物データベースに登録し,ホームページに「生物リスト」として公開しています。これまでは写真が小さく,1種あたり2枚の掲載でしたが,新しいリストは写真も大きく,1種あたり4枚の掲載が可能になりました。

 現在,登録種数と公開URLは下記のとおりです。

  福岡演習林 716種

   http://www.forest.kyushu-u.ac.jp/fukuoka/index.php?database

  宮崎演習林 2016種

   http://www.forest.kyushu-u.ac.jp/miyazaki/index.php?database

  北海道演習林 913種

   http://www.forest.kyushu-u.ac.jp/hokkaido/index.php?database

 今後も公開する種数を増やしていきますのでご覧ください。

2021.09.29 kubota

福岡演習林の生物リスト

植物(ブナ科)
哺乳類(ウサギ科,シカ科)
チョウ,ガ(タテハチョウ科)

8月の雨



例年ならお盆の頃に雨が続くということはあまりないのですが,長く続いています。雨による被害が出ないと良いのですが。



手前右に写っているスギは福岡演習林構内に設置された採穂園のスギです。近年は採穂園としては利用されていなかったのですが,今年度伐採し,実習用の人工林を造成します。アクセスの良い実習用林分ができることで教育効果が高まることを期待しています。


その採穂園の隣あたりの林分です。右側に見える少し背の高い樹木は植栽されたユーカリです。今日のような雨の日は,熱帯雨林のエマージェント種(林冠から飛び出たように生育する樹種)のようにも見えます。

2021/8/12 TE


もりのみまわり

演習林内の見回りは重要な基本業務です。
見回りの目的は様々です。
災害前後の安全確認のため、林道歩道など道路状況の把握、
林相の把握など。

先日は、古い森林の記録簿の記載内容を更新するための調査に教員、技術で行きました。

九州大学福岡演習林は九大の森や樹木園など、事務所のある敷地の他にも、たくさんの森を持っています。
何年もかけて、すべての林小班記録の更新を行っているところです。

今回歩いたのは福岡演習林1林班です。


暑い日でしたが、林内は風も心地よく吹き抜けていました
ダムがよく見えます


竹林は放棄すればおびただしい量の枯死稈の上を歩かねばなりません。
隙間にマムシなども生息しております。
今回この竹林は調べていないのですが(別途調査はしています)
ここを通り抜けることがこの日の調査で最もしんどいところでした。


常緑広葉樹の二次林。予想よりも材積が大きかった。


土壌調査もついでに行いました。
広葉樹のリターは下層がないとその場に留まりにくいのか、
なんだか有機物も少なそうなカスカスした土壌に見えました。
(分析中)



やはり土地の殆どを閉めているのは、スギ、ヒノキの人工林です。
スギ林の土壌は黒くてリターの堆積も良好ですね。
斜面のヒノキ土壌がいちばん土地が痩せているように感じますけど結果やいかに。
大学演習林は、過去からの記録がしっかりした森林生態系を所有しているという点で、大きな価値を持ちます。記録と現場の合わないところが見受けられるので、500ha弱、
しっかり歩いてデータ品質が保証できる森林教材を提供する準備をしています。

皆様のご利用をお待ちしております。


2021.7.3 TH

新年度のはじまり

 4月の話にさかのぼります。

ここ数年は、新年度の始まりとともに実習が開催されています。今年も、学生たちが演習林を訪れ、森林の環境に関して、樹木に関して、森林管理に関して学びました。

2次林の環境調査

人工林での雨量測定

苗の植え替え作業

森林管理の現状と課題

国際コースの実習なので、学生たちの出身地は様々。興味も様々。身近な森林とは樹種も環境も異なる中で、みんな興味を持って参加してくれました。 

来年もお待ちしています。

(2020/5/8)TK



季節の節目

時の経つのは早いもので、今年ももう端午の節句(五節句のうちの3番目)を過ぎましたね。

最近、福岡演習林かすや樹木園を歩くと、あちらこちらでサルトリイバラ(学名:Smilax china)が実を着けているのを見かけます。丸い実がかたまってついていて可愛らしいですね(専門用語で散形花序と言います)。


端午の節句に柏餅を食べた方も多いと思いますが、実は柏餅にカシワ(Quercus dentata)を使うのは関東や東北地方が中心で、西日本ではこのサルトリイバラの葉を使う地域が多いそうです。全国的に見ると、ホオノキ、ミョウガ、ヤブツバキなど、様々な種が使われるようですが、福岡では専らサルトリイバラが使われていたようです。

植物利用文化の地域性と、植物多様性の地理分布の関係は非常に興味深いですね。


今年は市販の柏餅(多分、Quercus dentata)を食べて、皆さんの健康をお祈りしました。

2021/5/6 B.K.

かすや樹木園の獣害対策

福岡演習林構内にあるかすや樹木園でも、シカによる食害被害が発生しています。

被害を防ぐために、進化花木区コアゾーン1と2に電気牧柵を設置しました。


電気牧柵と入口のゲート

かすや樹木園は現在一時的に閉鎖中ですが、早く一般開放できるようになるといいですね。


nanki

桜の季節

福岡演習林の構内の桜が咲いています。

様々な品種も植栽されています。

竹に迫られているものもあります。


今日は九州大学の卒業式でした。
ご卒業おめでとうございます。


今年度も演習林を利用した卒業論文研究がありました。
今後も多くの方の利用をお待ちしています。

2021.3.24, te