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はじまりのヤマ仕事

樹々が芽吹くこの時期は、山に林業用苗木を植え付ける「人工造林(じんこうぞうりん)」の適期です。福岡演習林では、ほぼ毎年、人工林の伐採とその跡地を造林するサイクルを続けています。
造林前の伐採跡地には、材として利用できない枝条類が散乱しています。これらの林地残材(りんちざんざい)を整理して、植え付けをし易くする「地拵え(じごしらえ)」から人工造林のスタートです。等高線方向に一定間隔で杭を打ち、そこに枝条類を集積します。

これを繰り返すと斜面に筋状の集積(畝)ができます。この形状から「筋状地拵え」と呼ばれる手法で、降雨に対して表土の流亡を防ぎ、畝が足場となることから植え付け後の作業時の安全も図れます。環境と管理の両面で理にかなった伝統的な手法ですが、手間がかかることがデメリットとされます。

苗畑から出荷された苗木(今回はヒノキ苗)は根系が発達しているため、多すぎる根を鉈で切断して整えます。これを「根切り」と言い、植え付け直前に行います。
近年の福岡演習林での造林地1か所当たりの面積は0.4~1.0ha、そこに植え付ける苗木は1000~3000本となるので、山元に根切り場を設けて1名が専従で根切りに当たります。

植え付け初日の3月25日、この時期にしては気温も低く雨天だったので、苗木が乾燥する心配がなく植え付けには適した天気でした。
しかし、標高450mのヤマの現場で雨風にさらされるのは「キツかねー」と、半日でやむなく撤退となりました。
翌日は一転して晴天となりました。晴天下で作業条件は良好ですが、苗木の根が乾燥すると活着前に枯れるため、休むことなくひたすら鍬を振るって植え付けを続けます。

メンバー全員の頑張りで昼過ぎには植え付けが終わりました。昨日と合わせて2000本の苗木を植え、約0.7haの造林地が完成しました。私の経験からですが、この造林地は良い林になりそうな気がします。

伐採跡地での地拵えに始まり、獣害防止の電気柵の設置(本文では省きました)、そして苗木の運搬と植え付けまでチームで協力し合って無事に終わることができました。

無事に一仕事終えた後は安堵と達成感を感じます。ことに植え付けに際してはその気持ちは大きく、自分が「ヤマの技術者」だと自覚します。
また、業種を問わず人手不足の時代ですが、造林の仕事では「人がいてこそのヤマ仕事」と改めて痛感します。キャリア終盤に差し掛かかりましたが、これからもヤマの現場に立ちたいものです。
(2026.4.2 D.O)


初心に返る

志賀島から福岡湾ごしにみる脊振山系


森林や山林は、普段目にする景観の一つです。
しかし、そこでの仕事は、人目に触れないので具体的にイメージするのは難しいでしょう。
最近は、ユーチューブ等で、お仕事動画を簡単に観ることができます。しかし、ヤマ仕事の動画のほとんどは伐倒・伐採といった派手なシーンに偏っているように感じます。

伐倒・伐採は林業のサイクルでは収穫にあたります。
林業では収穫までの養生期、つまり植栽から伐採までは50年以上の長期に亘ります。
そして、この間に行う管理作業が森林(ヤマ)の良し悪しを決めます。
一般にはあまり知られていないヤマでの仕事を二三紹介してみます。

1.植え付け

森林を伐採した跡地に新たに苗木を植える作業です。
平地の苗畑で育てた苗木(写真ではスギ)を山に上げて、現場で根切りをします。
そして、鍬で斜面を掘り、苗木を植えていきます。少しコツが要りますが、慣れてくれば一日で200本程度を植えることができます。 
造林(ぞうりん)ともいい、ここから新たに人工林を仕立てるわけです。 なお、作業時期としては晩秋~早春、厳寒期を避けて行います。

2.下刈り
雑草木に覆われた造林地
造林の初期段階では、植栽木よりも雑草、雑木類の成長が旺盛です。 そこで、植え付け当年から5年程度は雑草木の刈払い(草刈り)が欠かせません。
苗木の「下草を刈る」意味で、この作業を下刈り(したがり)と呼びます。 
一般的に夏期に行うため近年の酷暑下では、つねに熱中症の危険が伴い、それに加えてスズメバチの襲来もあり気が抜けません。
ヤマの仕事のなかでは、初心者・ベテランを問わずに一番過酷な作業です。
スズメバチの襲来も、と書きましたが、時にはノウサギが跳びだしてきたり、カブトムシが肩にとまっていたり、と厳しい作業の合間に気が和むこともあります。 

3.除伐
たくさんの雑木の生えた造林地
下刈り期間が終わった後の造林地では、雑草の心配はなくなります。 しかし、雑木は相変わらず植栽木と競うように成長します。
この雑木を伐る仕事が除伐(じょばつ)です。 植え付け後、10年前後で行うのが一般的です。
背丈を超える植栽木の間を伐り進む


除伐の終わった造林地です。実にすっきりしました。

かつては、下刈りには造林鎌(大型の鎌)、除伐では鉈と腰鋸を使用していました。
(私が若いころは、造林鎌を器用に扱うベテランの方をまだ見かけました)
現在は主として刈払い機と小型のチェーンソーが標準ツールとなっています。動力機械を用いて効率は上がりましたが、人力主体であることは今も変わりません。

ちなみに一連のヤマの仕事のことを「森林施業」(しんりんせぎょう)といいます。施業(せぎょう)とは他の業種にはない林業独特の言葉です。
林業では自然に委ねながらも、折に触れて森林に働きかけを行います。「業(わざ)を施(ほどこ)す」とは自然と融合した思想のように感じます。

福岡演習林では、近年は相対的に造林面積が小さくなっており、また、旧来の請負事業者が引退したため、技術の継承も兼ねて直営での管理作業が増えました。
造林地をつぶさに見て、手ずから作業すれば、その森林の未来形をイメージしやすくなります。外注中心の頃は、知らず知らずのうちにそれを忘れていました。
初心に立ち返り、ヤマと真摯に向き合うことの大切さを実感する今日この頃です。
(2025.1.22 D.O.)