もう秋分の日だというのに、暑い日々が続きます。福岡演習林は1922年に開設し、九州大学の3演習林の中で最も歴史が長いです。このため、小生の興味を引く様々な遺物や痕跡が数多く残されています。たとえば、炭鉱の設備のようなもの、時代も用途も判らない遺構、よく分からない外国産樹種などなど。今日は最近気になったマツの樹についてご紹介します。
マツ枯れはマツノザイセンチュウという線虫がマツ類に寄生することで水分通導を阻害しマツを枯死に至らしめる樹病ですが、日本では1905年に北アメリカからの輸入木材を介して上陸したとされています(国立環境研究所 侵入生物データベース)。福岡演習林の沿革を調べると、設立からほどなくして演習林と周辺地域では繰り返しマツ枯れが流行していたそうです。また、1970年代にはマツ枯れで全滅したアカマツ林跡地にスギ・ヒノキを植えた記録が残っています。このような経緯から、当時の福岡演習林ではマツ枯れに抵抗性のあるマツへの関心が高く、クロマッソマツの導入も試みの一つだったのかもしれません。
しかし、九州大学にやってきたクロマッソマツもやがてマツ枯れを起こし枯死していったそうです。クロマッソマツの入手元だった京都大学の上賀茂試験地でも多くのクロマッソマツが枯死したことが報じてられています(岡本ら
1990)。マツ枯れは林業的に大きな損害をもたらすため、森林総研など複数の研究機関ではマツ枯れ抵抗性の品種開発が続いています。福岡演習林のクロマッソマツはこれまでマツ枯れの猛威をかいくぐってきましたが、これからも生きていくのか、あるいはやはりマツ枯れに感染してしまうのか、引き続き見守っていきたいと感じました。
TN 2023.9.22