福岡演習林で発生したマツ枯れです。
立派なアカマツでしたが、昨年の夏に突然赤く枯れました。
「マツ枯れ」、正式には「マツ材線虫病」と呼ばれるこの病気、
樹木病害としては、日本の森林防疫史上最悪の被害です。
昭和・平成・令和と時代が移った今でもマツを枯らし続けています。
とくに被害の大きかった1970~1980年代、
これまた激害地であった山陽地方で幼~少年期を過ごした私は、
「マツは当たり前に枯れる木」と思っていました。
枯マツ材内にいるマツノマダラカミキリ(上:幼虫、下:成虫) |
ところで、この枯マツ、ただ枯れているだけでなく、病気の感染源となります。
そこで枯れマツを伐って、病原(マツノザイセンチュウ)の媒介者(マツノマダラカミキリ)を駆除します。
「伐倒駆除」と呼ばれる防除手法です。
そして、殺菌・殺虫作用のある薬剤をかけて、シートで覆い燻蒸します。
ただし、幼虫が蛹になると殺虫効果が薄れるので、春の伐倒駆除(燻蒸処理)は時間との勝負となります。
3月から順次、構内敷地で20数本の枯れマツを伐倒駆除しました。
この辺りでは昭和~平成間で多くのアカマツが枯れて無くなったと思われます。
一方、1本1本狙い撃ちにする伐倒・燻蒸処理は駆除効果は高いものの手間がかかります。
そのため枯れマツが多いと手がつけられません。
しかし、皮肉なことに残ったマツが少なくなり、手が回るようになりました。
何とかカミキリの発生前までに駆除を終わらせてホッとしました。
私自身、仕事について四半世紀が過ぎますが、長くマツ枯れに関わってきました。
日本中に拡がったマツ枯れに対して、森林での防除効果は限られています。
それでも、「できることからやっていく」。きわめて基本的なことですが、そうした地道な努力もまた大事なことと最近感じます。
2022.5.26 D.O