ナラ枯れと向き合う


ひと月前の話になりますが、福岡演習林でこじんまりした研修会を行いました。

2000年代に入って以降、東日本や日本海側の地方を中心にカシ・ナラ類の樹木病害、「ナラ枯れ」の拡大が問題になっています。

この病気では、木が部分的、または全体に枯れるのが特徴です。

ミズナラがとくに枯れやすいため、ミズナラが多く占める森林では、マツ枯れ同様に山が赤くなるほどの様相を呈します。


去年の夏、福岡演習林でもこの病気によるコナラの枯死を初めて確認しました。

福岡県では3年前(2019)に背振山系で初確認された後、徐々に県域に被害が拡がりつつあります。

こうした背景から、演習林での取り組みを紹介して、この被害について考えようと研修会を企画しました。


研修会には県の試験研究、林政機関に加えて日本樹木医会福岡県支部から参加がありました。

いずれも森林保護、樹木病虫害に携わるプロフェッショナルの方々です。



研修会ではこれまでに調査した結果を解説して被害の実態を知ってもらいました。

そして、実際に枯死木を伐倒して、材を細かく割ったり、燻蒸剤を使用した駆除法の検証を行いました。

福岡県下では私たちも含めて、実際の防除への取り組みは始まったばかりです。

活発な意見交換もあり、参加者の方々の意識の高さを感じました。

今回のナラ枯れに限らず、森林(自然)に起きる事象は何かしら必然があります。

「森林被害」、「病害虫防除」と聞くと悲観的や感情的になりがちですが、起きている事象にきちんと向き合い、その本質を見きわめることが大事です。

じっくりと腰を据えて、ナラ枯れと向き合うこととします。

(2022.6.24 D.O)