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ナラ枯れと向き合い続けること



メキメキ、バリバリと木が裂け、地響きととも大木が倒れます。何度経験しても緊張感にみちた伐倒の瞬間です。


演習林の庁舎からほど近くの小尾根にあり、幹と枝が大きく暴れたコナラ。昨秋から取り組んできたナラ枯れの伐倒駆除、今シーズン最後の1本を上手く倒せました。

一昨年から福岡演習林でもナラ枯れが発生して、この問題に向き合うこになりました。そして、昨年から調査と防除を本格的に始めました。
とはいえ、山地では調査と防除とも難しく、管理緑地と自然公園(篠栗九大の森)を抱える丘陵部の森林域(約70ha)を重点エリアとしました。

茶色に見えるのがナラ枯れ(コナラ)

2022年7月、当年の枯れが発生する頃に、ドローンを飛ばしてエリア内での枯れ木を探し、


目星をつけた場所に行って、枯れ木の位置と状態を調べました。
2021年には5本確認したナラ枯れ(処理済み)ですが、2022年には20本あまりと拡がっていました。
枯れた樹種はコナラがほとんどで、マテバシイが2、3本といったところでした。

遊歩道沿いの枯れ木
 
ナラ枯れは伝染性の樹木病害なので、伝染源の枯れ木を放置すると更なる拡大につながります。また、このエリアでは安全と景観の問題もあり、速やかな枯れ木の処理が望まれます。
一方、演習林ではマツ枯れの対処を長く行っているので、防除の経験は豊富です。
そこで、伝染源の除去と安全の確保を目的に、伐倒駆除を行うことにしました。
ただ、マツ枯れでのノウハウがナラ枯れに通用するか不安もあり、ある意味、技術的な試金石となる取り組みでした。


伐倒駆除を始めるにあたり、この仕事が容易でないのは予想できました。
幹と枝が暴れるコナラは重心と偏心の見極めが難しく、そのうえ、枯れた木は大径木(φ30~70cm)が多いため、高い伐倒技術が求められます。
また、材内のカシノナガキクイムシ(病原菌の伝播者)を駆除して、材を無害化することが肝心です。ところが、きわめて硬く、かつ重い材質のコナラを短く刻み、積込や運搬するのは骨が折れます。
加えて、想像以上にカシナガの穿入孔が高所まであり、駆除部分が多いことにも辟易しました。

それでも、諦めることなく伐倒した材を林外に運んで小さく割材し、
林外への搬出が難しい、または小さなサイズのものは現地で燻蒸して、
さらには、重機の入る場所では覆土処理、と。 
現有の人員と機材をフルに活用して1本また1本と枯れナラを処理していきました。
手強くはありましたが、おかげで技術的には多くの知見が得られました。
この点については、技術スタッフと専属労務班とのチームワークの賜物といささか自負しています。

さて、森林病虫害に対しての防除では、完璧を目指すのは現実的ではありません。
今回の駆除でも討ちもらした枯れ木もありますし、他所からの虫の飛来は防ぎようがありません。しかし、伝染源の多くを除去したので抑制効果は期待できます。
 左:枯れナラ伐倒後の林内の様子
 右:上空からみた伐倒後の疎開部
30年前、森林病虫害を専門に扱う仕事で私は自身のキャリアをスタートしました。
しかし、この分野では、とくに防除での速やかな結果が期待できず、かつ、その点を批判されがちです。
当時の私はそれを消化できず、また能力不足も感じてその職から離れた経験があります。

しかし、年月を経て再び森林病虫害と向き合うと、過去に感じた無力感はなく、正しい知識と技術をもとに、「身の丈に合ったことをやればよい」と気負いはありません。
これは年齢を重ね、自身のポンコツさを嘆きつつも付き合うしかない今の心境が影響しているのでしょう。
「ナラ枯れ」とも長い付き合いになりそうですが辛抱強く関わっていこうと思います。

(2023. 6. 9  D.O.)

ナラ枯れと向き合う


ひと月前の話になりますが、福岡演習林でこじんまりした研修会を行いました。

2000年代に入って以降、東日本や日本海側の地方を中心にカシ・ナラ類の樹木病害、「ナラ枯れ」の拡大が問題になっています。

この病気では、木が部分的、または全体に枯れるのが特徴です。

ミズナラがとくに枯れやすいため、ミズナラが多く占める森林では、マツ枯れ同様に山が赤くなるほどの様相を呈します。


去年の夏、福岡演習林でもこの病気によるコナラの枯死を初めて確認しました。

福岡県では3年前(2019)に背振山系で初確認された後、徐々に県域に被害が拡がりつつあります。

こうした背景から、演習林での取り組みを紹介して、この被害について考えようと研修会を企画しました。


研修会には県の試験研究、林政機関に加えて日本樹木医会福岡県支部から参加がありました。

いずれも森林保護、樹木病虫害に携わるプロフェッショナルの方々です。



研修会ではこれまでに調査した結果を解説して被害の実態を知ってもらいました。

そして、実際に枯死木を伐倒して、材を細かく割ったり、燻蒸剤を使用した駆除法の検証を行いました。

福岡県下では私たちも含めて、実際の防除への取り組みは始まったばかりです。

活発な意見交換もあり、参加者の方々の意識の高さを感じました。

今回のナラ枯れに限らず、森林(自然)に起きる事象は何かしら必然があります。

「森林被害」、「病害虫防除」と聞くと悲観的や感情的になりがちですが、起きている事象にきちんと向き合い、その本質を見きわめることが大事です。

じっくりと腰を据えて、ナラ枯れと向き合うこととします。

(2022.6.24 D.O)