梅雨の福岡演習林から

福岡の梅雨入りから早一か月が経とうとしています。今年は今のところ、雨が降り続くような日は少ないですが、毎日曇りがちな天気です。

梅雨なので、演習林の建物の中のからレポートしたいと思います。

演習林事務所の中の、私の席の後ろには大きな窓があって、窓の外にはテラスのような屋根付きのスペースがあります。


私はこの大きな窓をとても気に入っています。さわやかな風が通るし、庇が長いので直射日光は当たらないし、たまに誰か来るし(背中側に窓があるのでびっくりすることが多い)、解放感のある演習林っぽさが魅力です。

さて、今年、このテラスの庇にツバメが巣を作りました。

6月16日 上の方が黒い
巣作り中

6月19日 成功しそう

6月20日 完成したかも

6月23日 卵温めているかも

実はこの庇、あちこちにツバメの巣の残骸が残っているのですが、営巣に成功した様子はまだ見たことがありませんでした。今年は、何だか成功しそうな予感がします。

今後、雛が見られるのが楽しみです。もし雛が巣から顔を出したら、トップページに写真をアップしたいと思います。写真がアップされなかった場合は、ご想像にお任せします。

ツバメかわいいなぁ

「え?ボクのこと?」

「それなら羽づくろいせねば」

いずれにしても、ツバメが来てくれただけで十分嬉しい、梅雨の真っ只中です。

2023.6.23 muramatsu





ナラ枯れと向き合い続けること



メキメキ、バリバリと木が裂け、地響きととも大木が倒れます。何度経験しても緊張感にみちた伐倒の瞬間です。


演習林の庁舎からほど近くの小尾根にあり、幹と枝が大きく暴れたコナラ。昨秋から取り組んできたナラ枯れの伐倒駆除、今シーズン最後の1本を上手く倒せました。

一昨年から福岡演習林でもナラ枯れが発生して、この問題に向き合うこになりました。そして、昨年から調査と防除を本格的に始めました。
とはいえ、山地では調査と防除とも難しく、管理緑地と自然公園(篠栗九大の森)を抱える丘陵部の森林域(約70ha)を重点エリアとしました。

茶色に見えるのがナラ枯れ(コナラ)

2022年7月、当年の枯れが発生する頃に、ドローンを飛ばしてエリア内での枯れ木を探し、


目星をつけた場所に行って、枯れ木の位置と状態を調べました。
2021年には5本確認したナラ枯れ(処理済み)ですが、2022年には20本あまりと拡がっていました。
枯れた樹種はコナラがほとんどで、マテバシイが2、3本といったところでした。

遊歩道沿いの枯れ木
 
ナラ枯れは伝染性の樹木病害なので、伝染源の枯れ木を放置すると更なる拡大につながります。また、このエリアでは安全と景観の問題もあり、速やかな枯れ木の処理が望まれます。
一方、演習林ではマツ枯れの対処を長く行っているので、防除の経験は豊富です。
そこで、伝染源の除去と安全の確保を目的に、伐倒駆除を行うことにしました。
ただ、マツ枯れでのノウハウがナラ枯れに通用するか不安もあり、ある意味、技術的な試金石となる取り組みでした。


伐倒駆除を始めるにあたり、この仕事が容易でないのは予想できました。
幹と枝が暴れるコナラは重心と偏心の見極めが難しく、そのうえ、枯れた木は大径木(φ30~70cm)が多いため、高い伐倒技術が求められます。
また、材内のカシノナガキクイムシ(病原菌の伝播者)を駆除して、材を無害化することが肝心です。ところが、きわめて硬く、かつ重い材質のコナラを短く刻み、積込や運搬するのは骨が折れます。
加えて、想像以上にカシナガの穿入孔が高所まであり、駆除部分が多いことにも辟易しました。

それでも、諦めることなく伐倒した材を林外に運んで小さく割材し、
林外への搬出が難しい、または小さなサイズのものは現地で燻蒸して、
さらには、重機の入る場所では覆土処理、と。 
現有の人員と機材をフルに活用して1本また1本と枯れナラを処理していきました。
手強くはありましたが、おかげで技術的には多くの知見が得られました。
この点については、技術スタッフと専属労務班とのチームワークの賜物といささか自負しています。

さて、森林病虫害に対しての防除では、完璧を目指すのは現実的ではありません。
今回の駆除でも討ちもらした枯れ木もありますし、他所からの虫の飛来は防ぎようがありません。しかし、伝染源の多くを除去したので抑制効果は期待できます。
 左:枯れナラ伐倒後の林内の様子
 右:上空からみた伐倒後の疎開部
30年前、森林病虫害を専門に扱う仕事で私は自身のキャリアをスタートしました。
しかし、この分野では、とくに防除での速やかな結果が期待できず、かつ、その点を批判されがちです。
当時の私はそれを消化できず、また能力不足も感じてその職から離れた経験があります。

しかし、年月を経て再び森林病虫害と向き合うと、過去に感じた無力感はなく、正しい知識と技術をもとに、「身の丈に合ったことをやればよい」と気負いはありません。
これは年齢を重ね、自身のポンコツさを嘆きつつも付き合うしかない今の心境が影響しているのでしょう。
「ナラ枯れ」とも長い付き合いになりそうですが辛抱強く関わっていこうと思います。

(2023. 6. 9  D.O.)