福岡演習林百周年記念行事を行いました

前回の記事でお伝えしましたが,今年,福岡演習林は百周年を迎えます.

百周年記念行事を11月8日に行いました.

午前中は,参加者に篠栗九大の森を案内しました.下の写真は,ラクウショウ見本林の見学の様子です.



午後から,記念式典前に福岡演習林にて研究発表会と施設案内を行いました.福岡演習林で行われている研究を紹介しました.

研究発表会の様子

記念式典・記念講演は,久山町文化交流センター(レスポアール久山)欅(けやき)ホールにて行いました.

レスポアール久山

記念式典では,古賀演習林長の式辞,石橋総長,中尾農学部長の挨拶に続いて,ご来賓の西村久山町長,三浦篠栗町長より祝辞をいただきました.

続いて,記念講演を行いました.
菱拓雄 福岡演習林長より,「福岡演習林の歩みとこれから」というタイトルで講演しました.
福岡演習林(当時は糟屋演習林)は農学部林学科がある福岡市から近郊の実習施設として設置されました.当時,九大演習林は朝鮮や樺太にしかありませんでした(日本国外にあったというのも驚きですが).現在は,森林を専門とした学生だけではなく,様々な学部学生を対象とした森林教育や一般市民を対象とした公開講座にも力を注いでいます.研究も林業を主体とした森林研究から,生態学や環境モニタリングに関する研究が加わり,環境問題に根ざした幅広い研究が行われています.100年前の人たちは今の福岡演習林を想像できたのでしょうか?100年後の福岡演習林はどうなっているのでしょう.

続いて,清原裕 久山生活習慣病研究所 代表理事より,「久山町研究と久山町の疾病対策事業」というタイトルで講演していただきました.精度の高い疫学的調査に基づいた先導的な研究を紹介していただきました.糖尿病の人は認知症にかかりやすいらしいです.驚きの結果でした.


秋晴れの中,記念行事を行うことができました.
次の100年を目指して頑張ります.

2022.11.10 MC






福岡演習林100周年!の準備

 今年、福岡演習林は100周年を迎えます。

100年前の1922年(大正11年)頃の日本は、こんな時代でした。

・1918年:米騒動

・1923年:関東大震災

この頃の福岡演習林事務所の様子がこちら。なかなか洒落た建物ですね。

福岡演習林の100年のあゆみはこちらで見ることができます。

今年は福岡演習林100周年を記念した行事なども予定されています。

その準備が色々と進められているところですが、技術班でもちょっと古くなったあちこちをリニューアルしています。

その様子の一部をレポートします。

こちらは演習林のヒノキを伐採して、1年ほど乾燥させたもの。
チェーンソーで切り出して板材にしています。
それを整形して、表面に電動サンダーをかけてすべすべにします。作業者はびっくりするくらい全身木屑で真っ白になっていましたが、木工職人のようでカッコよかったです(写真撮り忘れました)。

文字を書き写して、立体的になるように電動彫刻刀で削る様子。繊細な作業をこなしていきます。画数の多い「場」が大変そうに思いますが、カーブのある「の」の方が難しいのだそうです。

文字を削り終えたら、板に防腐剤を塗って、乾燥させて、最後に文字の部分を黒く塗ります。

写真上の看板が古いもの。

もうすぐ完成です。わくわく。

完成したら篠栗九大の森に設置されます!

こちらはもう少し大きな板材。丸ノコで整形中です。
電動カンナと電動サンダーを駆使して、厚さ均一&表面すべすべです。
玄関の立派な看板になりました。
ヴィンテージ加工により違和感なく馴染んでいます。

植込みの剪定や芝刈りも日々行われています。
暑さが和らぎようやく作業もやりやすくなりました。

長い間、多くの人が関わって支えられて維持されてきた福岡演習林の100年の節目に、偶然職員の一員として居合わせたことをふと感慨深く思うことがあります。
自分の仕事が100年後、何かの役に立っていると良いですね。

おしまいに、ドローンによる演習林上空からの写真を一枚。
良い眺め...


2022.10.21   by muramatsu



スズメバチにご用心

 福岡演習林の位置する久山町と篠栗町では、今年の5月以降、特定外来生物のツマアカスズメバチの捕獲情報がたびたび報告されており、本種の定着が危惧されています。

【久山町・篠栗町のツマアカスズメバチ捕獲状況】

・5/6 久山町の養蜂場で女王バチを捕獲

・5~6月 久山町で雄バチを捕獲(捕獲調査)

・8月 久山町・篠栗町で50匹以上の働きバチを捕獲(捕獲調査)


 福岡演習林でも、ツマアカスズメバチの生息確認を兼ねて、事務所構内にハチトラップを設置しました(8/24~9/12)。

林内に設置したハチトラップ
 誘引剤に誘われてきたハチがトラップの中に入ると、逃げ出せない構造になっています。水面に浮いているのはオオスズメバチです。

捕獲したスズメバチの一部(捕獲場所:山の神)
 今回は4地点にトラップを設置し73匹のスズメバチが捕獲されました。幸いツマアカスズメバチは確認されませんでしたが、オオスズメバチやキイロスズメバチなど特に攻撃性の高い種も結構な数捕獲されました。

ハチの巣の駆除風景
 今年は例年に比べて、ハチの巣が多い印象を受けます。巣が小さいうちは職員で駆除も行いますが、大きい巣や危険な場所での作業は、無理せず専門の業者にお任せしています。

キイロスズメバチの巣
 上の写真の巣は、台風14号の影響で木の枝ごと落ちているところを職員で駆除しました。バスケットボールほどの大きさで、中身は7層にもなる立派な巣でした。

樹液に集まるオオスズメバチ
 これからの時期は、巣がますます大きくなり、ハチの数も多くなります。一方でエサとなる虫が少なくなり、ハチの攻撃性が増す時期です。林内に入る際には、黒い服を着ない、匂いの強い香水や洗濯洗剤を使わないなど、ハチに刺されない対策をするよう心がけましょう。

2022.9.30 murata

 3年ぶりに実施!

毎年、大学のオープンキャンパスにあわせ演習林で農学部体験授業を開催していましたが、ここ2年はコロナ禍で中止となっていました。今夏も感染拡大は続いており、中止も検討しましたが、森林分野に興味をもつ高校生に可能な限り応えたいという思いから、少人数を対象に実施に踏み切りました。

今回は県内外(遠くは広島県)から5名の生徒さんが参加してくれました。

農学部や地球森林科学教育コースの説明した後、野外に出て研究サイトの見学や樹木の見分け方、バイオマスの測り方、環境計測を体験してもらいました。


ラクウショウ見本林の見学 
残念ながらラクウショウは水没状態ではなかったのですが、ラクウショウの実生調査用のラベルがたくさんあることに皆さんが気づき、ここで実施している4年生の卒業研究の話になりました。


樹種の同定
図鑑を使って葉の特徴から樹種を調べています

バイオマスの計測
樹木の高さを協力して測っています。

環境計測
林内と林外で温湿度・照度などを測定し比較しました。
なんと野外の気温は36度を超えていました!

最後に先生たちに集まってもらい、座談会を開催しました。さまざまな話題がでましたが、みなさん将来のことを真剣に考えていて感心させられました。

先生たちとの座談会

みなさんといつかどこか(できれば九大)で再会できる日を楽しみにしています。

猛暑のなかお疲れさまでした。  

(2022/08/31 SK)



川の周りを見てみると

 暑い日が続いていますね。

そんな日でも、渓流周辺は過ごしやすく、比較的作業もしやすいです。

 演習林の中の渓流沿いを歩いていると、昔の活動跡に出会えます。

下の写真には、渓流沿いの2タイプの護岸が写っています。林道が渓流を横断している箇所に近いため右側には新しい護岸が、その少し上流(写真の左側)には昔の護岸らしきものが写っています。

一部だけが残っているようですが、昔の護岸らしきものを近くで見ると、下のようになっています。

そして、護岸の上の斜面のふもとには、石垣のようなものも残っています。

今は山奥ですが、昔はここでも人が活動していたようです。どんな建物があって、どのような活動をしていたのでしょうか?

近くでは、樹も護岸?してくれています。


(2022/7/31)TK

ナラ枯れと向き合う


ひと月前の話になりますが、福岡演習林でこじんまりした研修会を行いました。

2000年代に入って以降、東日本や日本海側の地方を中心にカシ・ナラ類の樹木病害、「ナラ枯れ」の拡大が問題になっています。

この病気では、木が部分的、または全体に枯れるのが特徴です。

ミズナラがとくに枯れやすいため、ミズナラが多く占める森林では、マツ枯れ同様に山が赤くなるほどの様相を呈します。


去年の夏、福岡演習林でもこの病気によるコナラの枯死を初めて確認しました。

福岡県では3年前(2019)に背振山系で初確認された後、徐々に県域に被害が拡がりつつあります。

こうした背景から、演習林での取り組みを紹介して、この被害について考えようと研修会を企画しました。


研修会には県の試験研究、林政機関に加えて日本樹木医会福岡県支部から参加がありました。

いずれも森林保護、樹木病虫害に携わるプロフェッショナルの方々です。



研修会ではこれまでに調査した結果を解説して被害の実態を知ってもらいました。

そして、実際に枯死木を伐倒して、材を細かく割ったり、燻蒸剤を使用した駆除法の検証を行いました。

福岡県下では私たちも含めて、実際の防除への取り組みは始まったばかりです。

活発な意見交換もあり、参加者の方々の意識の高さを感じました。

今回のナラ枯れに限らず、森林(自然)に起きる事象は何かしら必然があります。

「森林被害」、「病害虫防除」と聞くと悲観的や感情的になりがちですが、起きている事象にきちんと向き合い、その本質を見きわめることが大事です。

じっくりと腰を据えて、ナラ枯れと向き合うこととします。

(2022.6.24 D.O)

梅雨入り?

 6月に入り九州北部も梅雨入りしましたが、ここ福岡ではあまり雨が降っておりません。水不足にならないと良いですが....

 



 

梅雨と言ったら「アジサイ」ですね~

雨が少なくてもちゃんと咲いてます。

ピンクや青、紫など様々な色があって綺麗です。

 

 

 

チョウトンボ Rhyothemis fuliginosa

こちらは、チョウトンボ。

「ささやま通信」の背景画像にもなっております。

例年この時期になると、多くのチョウトンボが賑やかに飛び回っているのですが、今年は発生が遅いのかな?まだ数匹しか見かけませんでした。


2022/06/16 kaji


半世紀経てもなお

 


 

福岡演習林で発生したマツ枯れです。

立派なアカマツでしたが、昨年の夏に突然赤く枯れました。


「マツ枯れ」、正式には「マツ材線虫病」と呼ばれるこの病気、

樹木病害としては、日本の森林防疫史上最悪の被害です。

昭和・平成・令和と時代が移った今でもマツを枯らし続けています。

とくに被害の大きかった1970~1980年代、

これまた激害地であった山陽地方で幼~少年期を過ごした私は、

「マツは当たり前に枯れる木」と思っていました。

枯マツ材内にいるマツノマダラカミキリ(上:幼虫、下:成虫)

ところで、この枯マツ、ただ枯れているだけでなく、病気の感染源となります。

そこで枯れマツを伐って、病原(マツノザイセンチュウ)の媒介者(マツノマダラカミキリ)を駆除します。

「伐倒駆除」と呼ばれる防除手法です。

枯れたマツを切り倒し


幹と枝を短く刻んで



丁寧に積み上げます。

そして、殺菌・殺虫作用のある薬剤をかけて、シートで覆い燻蒸します。


2週間の燻蒸を経て、材内のマツノマダラカミキリ(幼虫)をほぼ完ぺきに駆除できます。

ただし、幼虫が蛹になると殺虫効果が薄れるので、春の伐倒駆除(燻蒸処理)は時間との勝負となります。

3月から順次、構内敷地で20数本の枯れマツを伐倒駆除しました。

この辺りでは昭和~平成間で多くのアカマツが枯れて無くなったと思われます。

一方、1本1本狙い撃ちにする伐倒・燻蒸処理は駆除効果は高いものの手間がかかります。

そのため枯れマツが多いと手がつけられません。

しかし、皮肉なことに残ったマツが少なくなり、手が回るようになりました。

何とかカミキリの発生前までに駆除を終わらせてホッとしました。

私自身、仕事について四半世紀が過ぎますが、長くマツ枯れに関わってきました。

日本中に拡がったマツ枯れに対して、森林での防除効果は限られています。

それでも、「できることからやっていく」。きわめて基本的なことですが、そうした地道な努力もまた大事なことと最近感じます。

2022.5.26 D.O