前回の記事でお伝えしましたが,今年,福岡演習林は百周年を迎えます.
ささやま通信は福岡演習林の職員が,日々演習林での仕事の様子や感想などを公開する場です。 ささやま通信の「ささやま」とは福岡演習林が所在する2つの町の町名に由来しています(篠栗町と久山町に演習林があります)。
福岡演習林百周年記念行事を行いました
福岡演習林100周年!の準備
今年、福岡演習林は100周年を迎えます。
100年前の1922年(大正11年)頃の日本は、こんな時代でした。
・1918年:米騒動
・1923年:関東大震災
この頃の福岡演習林事務所の様子がこちら。なかなか洒落た建物ですね。
福岡演習林の100年のあゆみはこちらで見ることができます。
今年は福岡演習林100周年を記念した行事なども予定されています。
その準備が色々と進められているところですが、技術班でもちょっと古くなったあちこちをリニューアルしています。
その様子の一部をレポートします。
文字を書き写して、立体的になるように電動彫刻刀で削る様子。繊細な作業をこなしていきます。画数の多い「場」が大変そうに思いますが、カーブのある「の」の方が難しいのだそうです。
文字を削り終えたら、板に防腐剤を塗って、乾燥させて、最後に文字の部分を黒く塗ります。
写真上の看板が古いもの。
もうすぐ完成です。わくわく。
完成したら篠栗九大の森に設置されます!
スズメバチにご用心
福岡演習林の位置する久山町と篠栗町では、今年の5月以降、特定外来生物のツマアカスズメバチの捕獲情報がたびたび報告されており、本種の定着が危惧されています。
【久山町・篠栗町のツマアカスズメバチ捕獲状況】
・5/6 久山町の養蜂場で女王バチを捕獲
・5~6月 久山町で雄バチを捕獲(捕獲調査)
・8月 久山町・篠栗町で50匹以上の働きバチを捕獲(捕獲調査)
福岡演習林でも、ツマアカスズメバチの生息確認を兼ねて、事務所構内にハチトラップを設置しました(8/24~9/12)。
林内に設置したハチトラップ |
捕獲したスズメバチの一部(捕獲場所:山の神) |
ハチの巣の駆除風景 |
3年ぶりに実施!
今回は県内外(遠くは広島県)から5名の生徒さんが参加してくれました。
農学部や地球森林科学教育コースの説明した後、野外に出て研究サイトの見学や樹木の見分け方、バイオマスの測り方、環境計測を体験してもらいました。
ラクウショウ見本林の見学 残念ながらラクウショウは水没状態ではなかったのですが、ラクウショウの実生調査用のラベルがたくさんあることに皆さんが気づき、ここで実施している4年生の卒業研究の話になりました。 |
樹種の同定 図鑑を使って葉の特徴から樹種を調べています |
バイオマスの計測 樹木の高さを協力して測っています。 |
環境計測 林内と林外で温湿度・照度などを測定し比較しました。 なんと野外の気温は36度を超えていました! |
最後に先生たちに集まってもらい、座談会を開催しました。さまざまな話題がでましたが、みなさん将来のことを真剣に考えていて感心させられました。
先生たちとの座談会 |
みなさんといつかどこか(できれば九大)で再会できる日を楽しみにしています。
猛暑のなかお疲れさまでした。
(2022/08/31 SK)
川の周りを見てみると
暑い日が続いていますね。
そんな日でも、渓流周辺は過ごしやすく、比較的作業もしやすいです。
下の写真には、渓流沿いの2タイプの護岸が写っています。林道が渓流を横断している箇所に近いため右側には新しい護岸が、その少し上流(写真の左側)には昔の護岸らしきものが写っています。
一部だけが残っているようですが、昔の護岸らしきものを近くで見ると、下のようになっています。
そして、護岸の上の斜面のふもとには、石垣のようなものも残っています。
近くでは、樹も護岸?してくれています。
ナラ枯れと向き合う
ひと月前の話になりますが、福岡演習林でこじんまりした研修会を行いました。
2000年代に入って以降、東日本や日本海側の地方を中心にカシ・ナラ類の樹木病害、「ナラ枯れ」の拡大が問題になっています。
この病気では、木が部分的、または全体に枯れるのが特徴です。
ミズナラがとくに枯れやすいため、ミズナラが多く占める森林では、マツ枯れ同様に山が赤くなるほどの様相を呈します。
去年の夏、福岡演習林でもこの病気によるコナラの枯死を初めて確認しました。
福岡県では3年前(2019)に背振山系で初確認された後、徐々に県域に被害が拡がりつつあります。
こうした背景から、演習林での取り組みを紹介して、この被害について考えようと研修会を企画しました。
研修会には県の試験研究、林政機関に加えて日本樹木医会福岡県支部から参加がありました。
いずれも森林保護、樹木病虫害に携わるプロフェッショナルの方々です。
研修会ではこれまでに調査した結果を解説して被害の実態を知ってもらいました。
そして、実際に枯死木を伐倒して、材を細かく割ったり、燻蒸剤を使用した駆除法の検証を行いました。
福岡県下では私たちも含めて、実際の防除への取り組みは始まったばかりです。
活発な意見交換もあり、参加者の方々の意識の高さを感じました。
今回のナラ枯れに限らず、森林(自然)に起きる事象は何かしら必然があります。
「森林被害」、「病害虫防除」と聞くと悲観的や感情的になりがちですが、起きている事象にきちんと向き合い、その本質を見きわめることが大事です。
じっくりと腰を据えて、ナラ枯れと向き合うこととします。
(2022.6.24 D.O)
梅雨入り?
6月に入り九州北部も梅雨入りしましたが、ここ福岡ではあまり雨が降っておりません。水不足にならないと良いですが....
梅雨と言ったら「アジサイ」ですね~
雨が少なくてもちゃんと咲いてます。
ピンクや青、紫など様々な色があって綺麗です。
こちらは、チョウトンボ。
「ささやま通信」の背景画像にもなっております。
例年この時期になると、多くのチョウトンボが賑やかに飛び回っているのですが、今年は発生が遅いのかな?まだ数匹しか見かけませんでした。
2022/06/16 kaji
半世紀経てもなお
福岡演習林で発生したマツ枯れです。
立派なアカマツでしたが、昨年の夏に突然赤く枯れました。
「マツ枯れ」、正式には「マツ材線虫病」と呼ばれるこの病気、
樹木病害としては、日本の森林防疫史上最悪の被害です。
昭和・平成・令和と時代が移った今でもマツを枯らし続けています。
とくに被害の大きかった1970~1980年代、
これまた激害地であった山陽地方で幼~少年期を過ごした私は、
「マツは当たり前に枯れる木」と思っていました。
枯マツ材内にいるマツノマダラカミキリ(上:幼虫、下:成虫) |
ところで、この枯マツ、ただ枯れているだけでなく、病気の感染源となります。
そこで枯れマツを伐って、病原(マツノザイセンチュウ)の媒介者(マツノマダラカミキリ)を駆除します。
「伐倒駆除」と呼ばれる防除手法です。
そして、殺菌・殺虫作用のある薬剤をかけて、シートで覆い燻蒸します。
ただし、幼虫が蛹になると殺虫効果が薄れるので、春の伐倒駆除(燻蒸処理)は時間との勝負となります。
3月から順次、構内敷地で20数本の枯れマツを伐倒駆除しました。
この辺りでは昭和~平成間で多くのアカマツが枯れて無くなったと思われます。
一方、1本1本狙い撃ちにする伐倒・燻蒸処理は駆除効果は高いものの手間がかかります。
そのため枯れマツが多いと手がつけられません。
しかし、皮肉なことに残ったマツが少なくなり、手が回るようになりました。
何とかカミキリの発生前までに駆除を終わらせてホッとしました。
私自身、仕事について四半世紀が過ぎますが、長くマツ枯れに関わってきました。
日本中に拡がったマツ枯れに対して、森林での防除効果は限られています。
それでも、「できることからやっていく」。きわめて基本的なことですが、そうした地道な努力もまた大事なことと最近感じます。
2022.5.26 D.O